「そういうのは桐島だろ。女子同士のほうが……」
「男の気持ちは男にしかわからないって言うでしょ?」
俺はたまらず立ち上がった。返す言葉を探しながら手すりに寄りかかり、なんとなく視線を落とす。
「あ」
反射的に声が出てしまった。すぐ真下をタイミング良く星野先生が通ったからだ。
「どうしたの?」
不思議そうに立ち上がった彼女が手すりに手を伸ばそうとしたとき、ヤツがひとりではないことに気づいた。
ひらひらしたロングスカートを靡かせて、周りを気にしながら星野先生に近づいていく女の影がある。
瞬間的に、まずい、と感じた。
ふたりが顔を合わせた途端、慌てて近くにあった彼女の腕を引き寄せる。
「え、なに?」
ふたりは物陰でキスをした。
「海くん?」
俺の胸の中で戸惑う彼女の頭を押さえ、早くふたりがいなくなることを願った。
「私また転びそうになってたかな。それならもう……」
「動くな」
離れそうになるのを無理やり抱き寄せる。