「先生たちの衣装も用意しちゃおう!」
うきうきと楽しそうに話しているが、その提案が出た瞬間ごくりと唾を飲んだ。
俺だけが知る彼女の秘密。『彼に見つけてもらう』と言っていたが、明らかに特定の人物に向けられているような気がしてならなかった。
「じゃあ、俺らはこの辺で」
「熊くんたちもうそんな時間かあ」
今月から始まった週に三日のアルバイト。二ヶ月ごとにローテーションで島内の様々な仕事を経験でき、熊と林太郎は先週からコンビニで働いている。
「じゃあ私も」
ふたりが出て行ってすぐ、なぜかなにもないはずの桐島まで立ち上がった。
「あれ、今日バイトだっけ」
「ううん。でも家で読みたい本がある」
相変わらず掴みどころのないやつだ。
桜井月も大して気にも留めていない様子で、ひらひら手を振って見送り、俺たちはふたりになった。
「そうだ、海くん。せっかくだから付き合ってほしいところがあるんだけど」
これはもう解散の流れかと思いきや、机を片付け出した彼女が満面の笑みを向けてきた。