「相変わらず楽しそうね」

 注文していたポテトが届いた。このレストランは六〇代くらいの穏やかな夫婦が営んでいて、たまにおばさんが話しかけてくる。

「なにしてるの?」
「ハロウィンイベントの企画です! 今衣装が決まったところで」
「まあ、楽しみね」

 五人になってから毎日ここで集まっているから顔を覚えられていて、特に桜井月は親しげによく話をしている。

「あとは内装かあ。仮面舞踏会ってなにがいる?」

 彼女はポテトを頬張りながら、慣れた手つきでドレスの絵を描き始める。なにかアイデアをくれと言わんばかりにちらちら桐島に目配せをした。

「美女と猛獣」

 絵を見ながらぽろっと言葉をこぼす桐島の声に反応し、桜井月が顔を上げる。

「それって映画の話?」
「そう。あるものに似せた方がイメージしやすいから。薄暗い明かりの中にシャンデリアがあったりして」

 その瞬間、男三人で顔を歪めた。なんとなく目が合い、考えることはみんな同じだったようだ。

「これって踊るとかではないっしょ?」

 熊が顔を引きつらせて言う。