「ドレスとタキシードに統一すれば、衣装選びも大変じゃないかなって」
一瞬目を泳がせながらも遠慮がちに言った。
「サイズの希望は取らなきゃいけないかもしれないけど、色変えるだけでも鮮やかになるし」
黙って聞いている俺たちを見ながら、次第に自信なさげに声が尻つぼみになっていく。
「いいかもな」
「え」
しかし彼女の説明するものが頭の中でパッとイメージでき、柄にもなくそれだと感じた。気づいた時には口に出していて、桐島は驚いたような顔でこちらを見た。
「テーマもわかりやすいし、備品も集めやすそうだなって」
続けて話すと、向かい合っていた桜井月と熊が顔を明るくさせてハイタッチする。これで決まりだという雰囲気が一気に広がった。
「私もすっごくいいと思った!」
桐島は爪をいじりながらすました顔で背もたれに寄りかかるが、桜井月の笑顔に照れていた。
「さすがナオミだね!」
「うるさい」
最近何度もこのふたりの同じやり取りを見ている。『友達だから下の名前にする』と宣言して以来、わざとらしくナオミと呼ぶようになった。