家の角に差し掛かり、思いっきり一歩踏み出した時、大きな瞳と目が合った。
「うおおお」
「きゃああああ」
鉢合わせた人物と叫びあっていた。不思議に思って駆け寄ってきた面々も集合し、全員がその人物を目撃する。
「はあい」
音の正体は幽霊ではなくマリアだった。
港に行って帰れなくなっていると思いきや、台風の被害が大きかった二軒隣の家を手伝っていて、ちょうど今帰ってきたらしい。
「驚かせちゃってごめんなさいね。キャンドル並べてなに話してるのかなって聞き耳たててたんだけど、全然聞こえないのね」
レインコートを脱ぎながらあっけらかんと笑う。
不気味な音の正体が分かり、みんなはホッと胸を撫で下ろした。緊張の糸がぷつりと切れ、みんなでソファになだれこんだ。
「あら、今日すき焼きだったの? まだ残ってるじゃない、食べちゃおう」
マイペースな彼女はこっちの気も知らずに、ひとりで卓上コンロの火をつける。
同時に電気が戻り、家中の明かりが一気に点灯した。