全員がぴたりと止まり息をのむ。

 明らかにウッドデッキを人が歩いている。しかも玄関とはちょうど真反対にある俺たちの背後の窓からする。

 誰もいるはずのない場所からする音に、さすがの俺も恐怖心を煽られるものの、両脇のふたりがぎゅっと絡みついてきていて全く身動きが取れなかった。

「い、今のもさ、風?」

 熊がぎこちなく笑顔を作るが、明らかに風の音ではなさそうだ。

「海くんちょっと見てきてよ」

 後ろから桜井月が強引に背中を押してきた。強く頷く熊と桐島までが俺を盾に背後へ回り込んできた。

「分かったよ、行けばいいんだろ」

 仕方なしに玄関へ向かう。

 俺はホラー映画も真顔で見られるタイプで、実在しないもののなにが怖いのかわからない。こぞって怯えている四人に呆れながら、勢いよく扉を開けた。

「大丈夫、後ろには俺らがついてるからな」
「いつでも来い」

 熊と林太郎の声ははるか後ろから聞こえてくる。

 振り返れば、おたまやフライパンを持って、まるで頼りにならない距離にいた。壁伝いにゆっくり進んでいくと、今度はシャカシャカと擦れるような音が聞こえてくる。