桐島の話が一気に現実味を帯び、背筋がゾクっとした。

「バカね、ただの噂話よ」

 桐島は言葉を失う俺たちを見て笑った。

 しかし膝を抱えて聞き入っていた桜井月は、恐怖心からかソファに座る俺の足にぴったりと背中をつけてくる。

「なあに? 幽霊なんて信じて……」

 桐島が半笑いで言いかけたとき、外からガタガタッと大きな物音がした。

「狭い」

 すると、驚いた拍子になぜか四人ともが一斉に俺の周りに集まってきた。

「だってほら、海ってオバケとか信じないタイプじゃん」
「海くん基本動じないもんね」

 熊と桜井月が両サイドでしがみついてきて口々に言う。

 驚いたのは、幽霊なんていないだろうと言わんばかりに鼻で笑っていた桐島までが、足元にこっそり身を寄せてきていたことだ。

 音のする方をまじまじと見たが、なにも聞こえてこない。隙間風の甲高い音だけが鳴っているだけだ。

「ただの風だろ」
「だよな。こんなタイミングよく、その、出るなんてな」

 俺の言葉に続いて、自分に言い聞かせるように言う熊が無理やり笑って見せる。

 しかし今度は軋むような音が少しずつ近づいてきた。