苛立ちながら服をタオルで拭く彼女を洗面所に案内した。

 大きめのTシャツとダボダボのスウェットパンツを部屋からとってきて、洗濯機の上に置く。なんとなく奥底にしまい込んで使っていなかった長袖のパーカーも置いておいた。

「一応廊下で待ってるから。なんかあったら呼んで」

 ひとつしかない懐中電灯を渡し、小さく頷く彼女を見てから扉を閉めた。

 リビングの方でゆらゆら揺れている灯りと扉の下の隙間から漏れ出す小さな光だけで、廊下は薄暗い。さすがにひとり残して行くのも違う気がして、ただぼーっと立っていた。

「桐島さん、大丈夫そう?」

 心配した桜井月が暗闇の中を追ってきて、俺は扉を見つめたあと、こくりと頷いた。

「ヒッ、なに⁉︎」

 しかし洗面所から聞こえてきた声に顔を見合わせる。

 無意識に反応し、体が勝手に動いて扉を開けた。ちょうど置いてあった懐中電灯がTシャツをワンピースのように着た彼女を照らしていた。スウェットを抱きしめたまま目が合った。