でもそれから二時間、マリアから連絡が入ることはなかった。
「きゃっ」
不吉なことは続き、突然家中の電気が消えた。桜井月の声を最後に静まり返る。
日が暮れて外の明かりもなく辺りは一変、暗闇と化した。近くのスイッチを押しても反応せず、どうやら停電したようだ。
「どっかに懐中電灯があったはずだから探してくるわ」
うっすら家具の位置が認識できるまでに目が慣れてきた。手探り状態で動き出すと、「俺も行く」と立ち上がった熊が後ろからついてきた。
懐中電灯を持って戻ると、熊が思い出したようにリビングの戸棚を開けてなにかを探し始めた。不思議に思い照らしたら、両手にカラフルな蝋ろうを持ってにやりと振り返る。
「すげえ匂い」
しばらくして部屋には灯りがともったが、みんな少し顔を歪めて林太郎の言葉に頷いた。
「うわっ、これいろんな香り混ざってる」
俺は構わず火をつけている熊に言う。
見つけたのはただのロウソクではなく、きっとマリアが趣味で夜な夜な使っているアロマキャンドルだ。