「別に」
「ふーん」

 林太郎の様子になんとなく引っかかった。ちらっとこちらを気にしては視線を逸らす星野先生にもやもやし、なんとなく目で追い続けた。

 強い雨風の影響でテラスには出られず、室内のカフェテリアスペースで昼食をとっていた。
その間、周りにいる生徒たちはとても騒がしい。

「午後の授業、一旦自習だって」

 熊が情報を得て戻ってきた。

「今回の台風、予報より速まるかもって先生たちが緊急会議開いてるらしい」

 外を見れば木々の揺れは朝よりも大きくなっていて、横殴りの雨が大きな音を立てて窓に打ち付けている。

 流れているテレビの天気予報では、十五時頃に島の真上に上陸しそうな勢いだった。

「星野先生どうしたの!」

 突然、甲高い声が遠くから聞こえてきた。

 外に続く自動ドアが開くと、ジャージを着た先生が頭からずぶ濡れになって現れた。周りにいた女子生徒は野次馬のごとく彼を囲む。

「レインコートってダメだね。外の点検してたんだけどびちょびちょだよ」

 へらへらしている星野先生をぼんやり見ていたら、不思議と足元に目がいった。