「年上ってやっぱりかっこよく見えんのかなあ」
羨ましそうに見る熊が俺の机に突っ伏して、急にぼやき始める。
「月もあの輪の中に入っちゃうのかな、つれえ」
ちょうど桜井月が取っていない授業で、目の前ではあからさまにつまらなそうな顔をする。彼女ならあの輪に入りそうなものだと感じたが、またそんなことを言うと騒ぎ出しそうで黙っておいた。
「さっきの問題解けた?」
噂をすれば、今度は俺たちの元へやって来た。なにも答えずに見ていたら、対応に困ったように愛想笑いされた。不意に隣の席を見たかと思えば、ぎょっと表情を変えて俺たちから離れて行った。
隣に座っている林太郎と目が合う。
「ん?」
「あー、いや」
明らかに林太郎を見て逃げた。
服装や髪形はやっぱり派手だから、ヤンキーには関わりたくないと避ける人は多い。しかしあの先生はそうではなく、驚いた顔で少し怯えているみたいに見えた。
林太郎は怪訝な表情をする。
「あの先生となんかあった?」
こっそり耳打ちしてみると一瞬考えるような素振りを見せたが、すぐに手元のノートに視線を戻した。