「いいよ」
「わーお、さすがね。ありがとう」

 完成した手を見て、何度も指を動かしながら満面の笑みを浮かべる。

「でもこの手じゃ今日の水仕事は無理ね。悪いんだけど、あなたたち食事は外ですませてきてくれる?」

 マリアは、よいしょと体を起こして冷蔵庫に向かっていく。動かしづらそうな手で牛乳を注いだ。

「よしっ、俺らで夕食作ろうぜ!」

 ソファに座っていたら、熊が勢い込んで立ち上がった。

「いいわよ、そんな無理しなくて」
「いいから! マリアに日頃の感謝をこめて、おもてなし」

 強引な熊はニカッと笑った。

「それで、なんで釣ってくるなんて言ったかなあ」

 作ると意気込んでなにをするのかと思えば、俺たちは熊に付き合わされ二時間もなにも起こらない釣り竿を見つめていた。

「そりゃ、島といったら自給自足でしょ。これが役に立つ日が来るとは、市場で見たとき買ってよかったあ」

 熊はひとり満足そうにしている。

 マリアに任せろと息巻いたまでは良かったが、無謀にも今日の魚は自分たちで取ってくるなんて言い出して、今に至る。