「天気はもちそうね。海たち今日は潜るんでしょう?」
朝食をとっていると、窓を開けながらマリアが空を見上げた。
湿気にまみれた空気が入りこんできて、気温三十度の中で降るスコールが一帯をじめじめとさせていた。
ここ最近、近くで発生した台風の影響を受けカラッとしない天気が続いていた。ちょうど夜のうちに進路を外れて大きな影響は出なかったが、少し風が強く波は荒そうだ。
「ああ、もうこんな時間」
忙しなく動くマリアは時計を見てため息をつき、いつも通り熊の部屋へ向かった。
しかし扉は珍しく自力で開き、のそのそと熊が起きてくる。行き場をなくした手をゆっくりおろし、マリアは呆然と立ち尽くす。
ソファで寝転んでいた林太郎が体をむくりと起こし、俺も予想外の状況に箸を持つ手が止まった。
「どうした」
顔を洗ってきた熊がすんなり向かいの席に座るもので、たまらず声をかけた。
いつも家を出るギリギリに起きてくるから朝食は用意されていない。唯一置かれているスムージーを喉へ流し込んだ。
「寝たら流すぞって佐伯先生が脅すんだ」
トンッと置いたコップとともに、熊が真剣な顔で口を開く。
「絶対起きてなきゃって思ってるんだけど瞼が閉じてきちゃって」
「は?」
「そしたら、ばかでかくなった先生が水道の蛇口ひねるんだよ。それで俺、排水溝に流された」