「まあ、青汁みたいなもんだと思えば?」

 俺もなに食わぬ顔で飲みほした空のコップを見つめた。

 島に来た初日から当たり前のようにテーブルに並んでいたから、なぜか飲まないという選択肢がなかった。

 しかしあとから入居してきた林太郎は口に含んだ瞬間吐き出して、それ以来絶対飲まないと決めたらしい。

「林太郎も飲みなさい! 体に良いんだからあ」
「無理、いらねえ。それ変な味するし」
「んもうっ」

 林太郎はスムージーを手に追いかけ回してくるマリアから逃げるように家を飛び出した。

「さっき寝かけたろ」
「ふあぁ、ねみいもん」
「いつか死ぬからな」

 ウエットスーツを脱ぎながら、半分も目が開いていない熊を見て林太郎が突っ込む。

 午前中はスキューバーダイビングの授業だ。学科講習を終えた俺たちは、何日か前から校舎の裏手にある浅瀬の海岸で器材の使い方や呼吸法を習っていた。

「え、溺れたら助けてくれるよな?」

 林太郎の言葉が効いたのか、急に顔を青ざめさせてしがみついてくる熊を、俺はなにも言わずに見下ろした。

「おっ、三人衆。仲良くやってるじゃない」

 校舎へ戻ろうとしたら、前から来た佐伯先生とすれ違う。インストラクターの資格を持っていて、さっきまで俺たちのダイビング講師として授業をしていた。