夕食を済ませたあと、午後八時にビーチへ集まった。

 青春の一ページ。はしゃいでいるみんなの姿を、砂浜であぐらをかいて見守っていた。

 壇はなぜか俺の横でひとり黙々と火をつけては花火を散らしている。

 たまに無言でひとつ渡してきて、なにを言うわけでもなくパチパチと弾ける花火をふたりで見ている時間もあった。今日の主役だろ、と熊に連行されていく壇はだるそうに歩きながらも、意外と素直に輪の中に加わっていった。

「桐島さん、誘えなかった」

 みんなと楽しんでいたはずの桜井月が、新しい花火の袋を開けながら横に腰掛けてきた。

「部屋に行ったらいなくて」
「まあ誘ってもこなかっただろうよ」

 残念そうに膝を抱えて縮こまる。

 手元の火種が消えて、水をはったバケツに投げ込んだらジュッと音を立てた。一緒にその場の空気も静まった。

「仕方ないかあ」

 彼女は新品の花火を見せながら、行こう、と誘ってくる。

 でも人の多い空間は苦手だ。後ろからひとりで見ている方が楽で、俺はあえてなにも答えなかった。

「ちょっと飲み物買ってくるわ。なんかいる?」

 とりあえず理由を作りたくて立ち上がる。

「んー、じゃあ炭酸! シュワってやつ」
「大抵炭酸はそういうもんだろ」

 相変わらず少し変わっている彼女の希望に半笑いで首を傾げ、その場を離れた。