港に商船がつくのは毎週日曜の午前九時から午後二時まで。急に港が賑わいを見せるからある種お祭りのようだ。数量限定でゲームや漫画などの娯楽品も販売され、朝早くから待ち構えている人も少なくなかった。
「海、これやろう」
港に到着して早々、なにかを見つけてもってきた熊が駆け寄ってくる。
手には花火のバラエティパックを抱えていた。
「壇の歓迎会ってことで」
わいわい花火なんてやるタイプだろうかと、ちらりと壇を見て疑問に思う。
「俺はいいけど」
「そしたら月たちも呼んでさ!」
しかし、目をキラキラさせながら、すぐに桜井月の名前が出てきて本当の目的を察する。
「そっちが狙いか」
歓迎会なんて建前で、ただ単に彼女と花火がしたいだけだ。心の内が読めてしまった。
「へえ、そういうこと」
「分かりやすいだろ」
壇もすぐに察したようだ。
「みんなー!」
ひとりだけなにも分かっていない熊が混乱していると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。タイミングよく桜井月がルームメイトと共に現れた。
「今日花火やろっ!」
「花火? やったあ、やりたいやりたい」
パッと表情を明るくするふたりは子供みたいに喜んで、その場にいた女子たちも誘い盛り上がり始めた。