放課後、自転車をひきながら桜井月と共に帰っている。行き先は金髪の男、壇の家だ。
「なんで俺まで」
前を歩く彼女の背中を追いながら家までの帰路を外れ、別の道を通っていく。
壇はつい三日ほど前、ルームメイトと喧嘩になり、駆けつけた先生たちに取り押さえられた。ことの経緯は分からないが、なぜか壇だけが自宅謹慎を命じられている。
桜井月は話を聞いた直後、険しい顔で『とにかく会いにいきたい』と言い出した。
ひとりで行けばいいものを、なぜだか俺まで付き合わされる羽目になった。
他に頼める友達がいないのだと無理やり引っ張り出されたが、彼女と友達になった覚えはない。
「ひとつだけ、凄く勝手なお願いがありまして。ついてきてほしいとは言ったけど、壇くんと話すときは離れていてほしいっていうか」
「そりゃ勝手だなあ」
気のない返事をしながら、こんな状況を熊に知られでもしたらなにを言われるか。そればかり考えて頭を抱えた。
人の気苦労など知りもしないで、彼女はひたすら続く一本道を意気込んで進んでいく。このままペダルに足をかけ一目散に消えてしまおうかと、何度思ったことか。
未来に感じる悪寒を想像し、熊には絶対黙っておこうと心に決めた。