「桐島さんって、きっと高嶺の花なんだよね」

 熊は薬を飲んで寝ていることになったと学校へ連絡が入り、結局俺は桜井月とふたりでお昼を食べることになった。

「なんか海くんと似てる気がするなあ」

 校舎の広場でハンバーガーを買い、テラスに座るなり唐突に言う。

「俺?」

 先程から桐島のことばかり話してくるのを一方的に聞いていただけだったけれど、急に自分の名前が浮上して初めて声を出した。

「島にきたときからイケメンがいるって有名になってたもん」
「へえ」
「でも人を寄せ付けないオーラがあって、話しかける勇気ないってみんな言ってた。そういうとこちょっと似てない?」

 まるで興味はなく、ハンバーガーをかじりながら首だけ傾げた。

 すると彼女は俺を見てくすりと笑った。

「熊くんが言ってた通りの人だね」

 なにを言ったのか知らないが、ロクなことじゃないのは明らかだ。眉をひそめて見返すと、彼女は咳払いをして熊の真似をしようとする。

「あいつは中学の時から相当モテてたのに、部活にしか興味示さないなんてイケメンの無駄遣いだ」

 熊の言いそうなセリフだ。

「大きなお世話かよ」

 言いながら、思わず笑いそうになった。

 でもそれを言えば熊だって、いつも輪の中心にいるムードメーカーであの明るい性格がモテないはずはない。

 それなのに今目の前で小さな口をめいいっぱい開けてハンバーガーにかじりつく桜井月しか見えていないから、他の女子になんて興味も示さない。もはや似たようなものだ。