私、は秘密の恋をしている。
「なんか意外だなあ」
「なにが?」
鳥のさえずりや葉が揺れる心地よい音を感じながら、自然の中の密会現場にいる。
「月ちゃんみたいに真面目そうな子が教師と禁断の恋なんてしてるところ」
目の前にいる彼は太い幹に体重を預け不敵な笑みを浮かべる。
サマーキャンプ二日目の夜。辺りが薄暗くなりはじめ、みんなはキャンプファイアの準備に忙しくしていた。
私はその一瞬を狙って彼に会いに来た。
「違うよ、付き合ってた人が知らないうちに高校教師になっちゃっただけ。教師と付き合ったわけじゃありません」
「えー、そう?」
「そうだよ。禁断の恋にしたのはそっちでしょ?」
「てか、まだただの実習生だしなあ」
顎の辺りにある色っぽい黒子を見せながら、切れ長の瞳が空を見上げる。
そよ風に触れるたび、ナチュラルに伸びる黒髪が揺れて太い眉毛がちらちらと顔を出す。そのすべてが愛おしい。
彼はヒカリノアカデミーの教育実習生だ。