「ごめん、途中で迷子になっちゃって」
タイミングよく桜井月が現れた。
いつも通りの変わらない笑顔で何事もなかったかのようにみんなの輪の中に戻る。
しかし、森の中での光景を思い出され、今でも目に焼きついて鮮明に覚えている。無意識に彼女を目で追っていた。
気づかれると首をかしげながら不思議そうに、ん、と微笑まれた。
「良かったよ。月が戻ってこないから、ちょうど今探しに行こうとしてたんだ」
「え?」
熊の言葉にすっと表情を消す。明らかな動揺を見せる彼女は顔を引きつらせ、やはり見間違いではなかったのだと改めて痛感する。
その場にいるのが窮屈で、俺はひとりテントへ戻った。