「絶対行くな!」
口にしてから気づいた。
血相を変えて引き留めた俺は焦りすぎてあまりにも不自然だ。不思議そうなみんなの視線が集中し、目を泳がせた。
「え、どうした?」
一番驚いていた熊は、いつもと違う俺を見て目を丸くする。どくどくと心拍数が上がり思わず顔が引きつった。
「トイレにまで探しに来るやつは嫌われる」
咄嗟に思い付いた言い訳を発し、だんだんと勢いが尻つぼみになっていく。
誤魔化せたかとドキドキしながら様子を伺うと、しんとした空気が急に動き出したような気がした。
「たしかに!」
「それは嫌だよねえ」
「待ってれば帰ってくるよ」
納得する女子たちが口をそろえて言う。
熊もポリポリと頭をかきながら、いじけたようにしゃがみ込んでその光景にホッと安堵した。