半年後。歓声が響く中、レースが始まる。

 コースを走って争い、上位二着までが予選への切符を手にする。潮の流れに揺られながら十名ほどいるライバルたちと並んだ。

「海くーん、海くーん!」

 人一倍大きな歓声が聞こえてきて、なぜか月の声だけがよく耳に届いた。

 予選にエントリーするメンバー決めだというのに、振り返れば大きな横断幕まで掲げている四人の姿が見えた。

 前へ向き直り大きく深呼吸をした。

 背後から聞こえてくる歓声に包み込まれる。あの頃の懐かしい記憶が蘇り、ぞわぞわと全身に伝わる、奮い立つような感覚はもう二度と味わえないと思っていた。

 ぎゅっと手を握る。噛み締めるように力を込め、ゆっくり帆をにぎった。

 ピストルの音がビーチに響き渡る。一斉にスタートした俺たちは水平線に向かって動き出した。

「行けえ!」

 背中を押す声援を背負ってゴールを目指す。
 夢への扉は、開かれたばかりだ。