「八月に高校生大会があるらしいんだ」
「大会?」
「ちょっと早いけど、実力試しに目指してみないかって言われてる」

 昨日の朝、聞かされたばかりのホヤホヤな話。実際どこまでできるか分からないから佐伯先生にも、やってみる、としか言えなかった。

 しかし、とにかく彼女には一番に聞いて欲しかった。

「すごい、すごいよ!」

 自分のことのように喜ぶ彼女の反応は想像通りだった。

「各高校から予選にエントリーできるのはふたりだけ。その前にまずはここで勝ち残らないといけないんだけど」

 元々経験があったり、俺よりも早くに始めたライバルが何人もいる。勝てる自信なんて正直まだないけれど、月には伝えておきたかった。

「応援きてよ」

 時折、空からスポットライトを浴びたみたいにパッと辺りが明るくなる。その度に彼女の大きな瞳が俺をまっすぐ映していた。

「もちろん、絶対いく!」

 目の前で花火のような満開の笑顔が咲く。

「六月のレースまでに実力つけるよ」
「海くんなら絶対できる。私が保証する!」

 月は花火の音にかき消されないよう必死に声を出した。

「なんだよその自信」

 俺は笑って嬉しさを隠した。

 しかし不思議だ。なんの根拠はないはずなのに、彼女にできると言われたら自然と出来る気がしてきた。

「だって、(かい)くんには(うみ)が似合うから」