「そうだ、ウィンドサーフィンはどう? 楽しい?」

 こもったようなバックミュージックと夜独特のしんとした空気に包まれる。

「んー、全然上手くいかない」

 彼女の問いかけにどう答えるべきか迷ったが、結局情けない言葉がこぼれていた。

「そんなことないよ」

 必死に励まそうとしてくれたが、なんと言われようと事実は変わらない。

 最初はそんなものだと言われても、周りで軽々とやってのけるのを見たらどうしても負けず嫌いなところが出てしまう。

 気持ちだけが先走っていた。

「ほら、佐伯先生も褒めてたよ。今朝だって凄く上手くいってたし」

 続ける彼女は途端に、はっと口を押さえる。

「今朝?」
「うん、たまたま? コンビニ行くついでにちらっと見かけて」

 恥ずかしそうに俯く。

 苦し紛れのセリフに、ふーんと反応するが俺は知っていた。

 練習していたところはコンビニを通り過ぎないと見えないはずだ。