「嫌がらないの?」
「なんで。私が?」
「だってナオミ、海くんのこと好きでしょ?」
目が点になる、とはこういうことを言うのか。いつも冷静沈着な彼女の間抜け面を見た。
「それ本気で言ってる? 悪いけどタイプじゃない」
次第になにがおかしかったのか笑い始めた。
「なんだ」
呟きながらナオミに気持ちがないと知ってホッとしている。
しばらくして、どうしてホッとしたんだろうと自問自答した。自分でも自分の感情がよく分からなかった。
「海なら外のデッキにいるよ。悩んでるみたいだから励ましてやれば?」
熊くんは私の肩を持ち体の向きをくるっと変えてくる。
そのまま軽く背中を押されバタバタと前に進む私は、玄関の前で固まって動揺していた。