「本当に?」と続けようとしたら、熊くんが一点を見つめて声を出す。

 視線の先を辿ったら、いつの間にか砂浜に上がってきていた海くんの前にはナオミが立っていた。

 ここからではなにを話しているのかは聞こえない。

 ただ水浸しの彼に大きなタオルを手渡す珍しい彼女を見た。

「あのふたりってそんな仲良かったんだ」

 その様子になんだか胸がチクッとした。

「やべ、こっちくる」

 焦る熊くんに引っ張られ、慌てて顔を隠す。

 小屋の中にはマリンスポーツの用具がぎっしりと置かれていて、サーフボードを片手にこちらに向かってくる海くんの声が少しずつ近づいてきた。

「そんなの聞いて興味あんの?」
「わかんない。でもどんな気持ちか聞きたい。これが新しい夢なんでしょ?」

 会話は断片的にしか聞こえず、なにを話しているのかすごく気になった。

 盗み聞きのようで少し後ろめたさがあるものの、耳は大きくなっていた。