「私がいるよ」

 包み込むような優しい声だった。

「もしまたダメになったって、何度できなくなったって、私たちがちゃんと暗闇から引き上げてあげる。だから大丈夫!」

 月の言葉が背中を押した。

 ずっと足踏みしたまま前に進めず、時間は止まっていた。そんな俺をポンと外の世界に出してくれた気がした。

「行っておいでよ」

 時計の針がまた動き出す。

 霧がかっていた景色にも晴れ間が見えてきた。

「やってみるか」

 空に向かって手を伸ばし、うっすらと光る一番星を手の中におさめる。

 勇気が湧いて、今ならなんでもできるように思えた。