「でも弟の方が優秀だって分かった途端に態度はコロッと変わって俺は用済み。父親への反発心でとことんグレてやったら、この島に通うことになってた」
彼ははじめて会ったときから心を閉ざし、自分のことなんて話したがる人ではなかった。
一匹狼でみんなを遠ざけてばかりいた。
だから過去をさらけだしてくれるなんて、今までじゃ考えられなかった。
「俺は壇家の恥なんだってさ」
彼は辛そうに顔を歪める。
誰も口を挟むことなんてできず、黙って耳だけを傾けていた。
「でも今は親父に感謝してる」
彼になんて言葉をかけたらいいだろう。頭の中はそればかりだったのに、意表をつくセリフに一瞬、えっと声が漏れてしまった。
彼を見ると、どこか照れ臭そうに頭をかいている。
「今までどこにいても煙たがられて、人から嫌われようとどうでも良かったし、その方が楽だと思ってた。だけどお前らが、そこにいるのが当たり前って顔で居場所を作ってくれた」
嬉しそうに言う壇くんが、そんな風に思っていたなんて知りもしなかった。