「ごめん! 本当にごめんなさい!」

 すぐ横で、熊くんの大きな声がした。

 バチンと両手を合わせ、気まずそうに顔を逸らす海くんを前にすかさずしゃがみ込む姿がある。

「絶対絶対言い過ぎた。俺、どうしていいかわかんなかったから」

 なにかを弁明しているがなんのことだかサッパリだ。彼らが喧嘩していたことすら今はじめて知った。

「俺も悪かったよ、言い過ぎた」

 海くんの言葉にホッとした顔を見せる彼は、あーっと手を広げながら砂浜に寝そべった。

「月」

 状況が読めずに戸惑っているうち、空を見上げながら私を呼ぶ熊くんに顔を向ける。

 「なに?」と聞き返すと、にかっと白い歯を見せて笑ってきた。

「学校行こう。月がいないと俺つまんないよ」

 みんなの視線が集中する。

 私は嬉しくてすぐにでも頷きたかったけれど、どう答えたらいいか分からなくなっていた。