九月に入り、とうとうヒカリノアカデミーは開校した。
授業は基本科目に加えて課外活動が多く組み込まれていて、スキューバーダイビングのライセンスがとれるという南の島ならではの特権もある。
放課後には週三日、島の公共施設でアルバイトをすることが義務づけられていて、交代制であらゆる職業体験ができるのもこの学校の特徴だといえる。
入学式を終えた翌日から一泊二日のサマーキャンプが行われる。生徒たちの親睦を深める目的で、午前十時、校舎の裏手に広がる森の中に集められた。
「これって近づくチャンスだよな。かっこいいところ見せるチャンスだよな」
「そんなこと言って空回りすんなよ?」
熊がちらちらと視線を送る先を見ながら、呆れたようにため息をついた。
キャンプ中、ルームメイト同士で力を合わせて行動するようにと言われた。用意されていたテントを設営し始めた少し先で、桜井月のグループがせっせとテントを組み立てている。熊の意識はそこにばかり向いていた。
「なあ、海。あれ女の子だけじゃ大変だよな。手伝いに行く?」
「まずは俺らが建てられなきゃ、行ってもできなくて恥かくだけだぞ」
「うん、たしかに」
素直に聞き入れたものの、必死にペグを打ち付けてテントを固定しているのは俺ばかり。熊はただただ紐に手を添えるだけで、視線ばかりが忙しそうだ。
「でもさ、終わったら一緒にやるから待っててって、それくらい言いにいっても」
「手を動かせ」
「ほい」
向こうが気になって仕方ないようで、呆れながら力いっぱいにハンマーを振り下ろした。