「お前のことが好きで、ただ近くにいたかっただけだったはずだよ。それなのにその気持ち踏みにじるような真似して」

 しかし彼はそんな言葉すらあざ笑った。

「そんなの勝手についてきたあの子が悪いんだろ」

 ずたずたに心を踏みつぶされている気分だ。

 私はこの人のどこが好きだったんだろう。

「それでも傷つけていい理由にはなんないだろ。あいつの……、月の気持ちをなんだと思ってんだよ!」

 海くんが声を荒げる。

 たまらず一歩踏み出すナオミを、すかさず壇くんが引き留める。

 私のためにここまでしてくれる友達を見て、自然と涙が頬をつたった。

「ついてこなきゃ幸せだったのに。こっちはそんな写真ばらまかれたんじゃ迷惑だよ」

 その瞬間、体が勝手に動いていた。

 木陰から飛び出し、ズカズカと地面を強く踏み締める。

「え、月ちゃん?」

 突然現れた私に驚いてこちらを見た誠くんに向かって、勢いよく手を振るった。

 パンッと甲高い音がその場に響く。

「私の前から消えて。もう二度と顔なんて見たくない」

 手の平がじんじんと痺れている。