「俺、バカだからさ。すぐ受け入れるとかできなくて、なんもできなかった」
幼馴染みなのにな、と申し訳なさそうに言う熊くんに、私は慌てて首を横に振った。
「熊くんはなにも……」
「いいんだ、分かってる。度胸のない俺にはこんなことしかできなかったけど、みんな月の味方なんだって見届けてやってほしい」
私は言葉が見つからず、視線を移してただただ見守っていた。
「教育実習生の分際で生徒と付き合ってたなんて知られれば、将来に響くんじゃないんですか」
堂々と対抗している海くんの声が聞こえる。
誠くんは顔を青ざめさせ悔しそうに後ずさっていた。
「そんなことしたら彼女も問題になるぞ。ここにはいられなくなる」
いつも冷静で完璧な人だと思っていた彼はもうそこにはいなかった。笑いながらできるわけがないとたかを括り、私を引き合いに出す。
その瞬間、一気にまだ残っていたカケラほどの気持ちが冷めていくのが分かった。
「最低だな」
海くんは低い声を出し、下ろしていた手をぎゅっと握った。