「この島に来る前はいろいろあって、海は引きこもり状態で学校にも行ってなかった。もう見てらんないくらいボロボロだったんだ」

 ふと洞穴での会話を思い出す。

 ナオミから競泳の元オリンピック候補だったなんて聞いて、ミーハー心から飛びついてしまった。

「もしかして競泳の選手だったっていうのと」
「ああ、知ってたんだ。うん。あいつ肺に異常が見つかって全部諦めることになったんだ」

 私はなんてことを言ってしまったんだろう。

 泳いでるところが見たいと思って、余計なことを口にした。

 やめてくれと声を荒げたのを思い出し、私は一番触れられたくなかった過去に土足で踏み込んでしまったのかもしれない。

「でもあいつ変わったよ。月の影響かな」
「私の?」
「みんな月が変えてく。林太郎も桐島も、月がいなきゃ一緒にいなかったかもしれない」

 私にはそんな風に言ってもらう資格なんてなかった。編入してまで追いかけてきた恋人には遊ばれて、ショックのあまり引きこもる。

 落ち込んでみんなに心配もかけて、恥ずかしくてたまらない。