「一緒に来てほしいところがあって」
「出てってよ! ひとりにして」
「月は来なきゃだめだって!」

 投げる物もなくなり、枕を持った手がピクリと止まる。大きな声が飛んできて私は目を逸らした。

「月には見届ける責任がある」

 近づいてきた熊くんが手を差し出してくる。彼の目がいつになく真剣で戸惑った。

「着替えて。外で待ってるから」

 目を逸らした私に一方的に言い残した彼は部屋を出ていった。

 絶対出てやるもんかともう一度布団に潜りこむ。

 それでも少し気になってカーテンの隙間から顔を覗かせると、熊くんは玄関の前で待っていた。

「どこにいくの?」

 久しぶりの朝日を浴びた。

 ずっと暗い部屋にこもっていたせいか眩しさに目を細めた。

 強引に自転車に乗せられ、なぜか先生たちが住む社宅の裏手に連れてこられた。

 腕を引かれながら茂みの中に入っていったら、木の陰で立ち止まった熊くんがそっと向こうの方を指さした。