監視カメラやボイスレコーダーでも取り寄せて、はめてやろうかとも思ったが、桜井月本人にその気力はあるだろうか。
家に帰り、シャワー浴びながら桐島の言葉がもやもやと残る。
決定的な証拠なんて都合のいいものがあるならと心底願った。
乾かしたての湿った髪の毛をかき上げて、ため息をつく。
不意に開けっ放しになった向かいの部屋に一眼レフが置かれているのが見え、立ち止まった。
なんの気無しに素通りできたはずなのに、なにかが、俺の中で引っ掛かった。
「なにしてんの」
後ろから不思議そうな声がする。
部屋の前で動かない俺を不審な顔で覗き込んできた林太郎と目があった。
「なあ、最初に会ったときあのカメラ持ってなかったっけ」
俺はただただ一点に集中した。
「桜井と追いかけてきたとき? そりゃ持ってたよ。俺の写真見てたじゃん」
「いや違くて」
だんだんと込み上げてくるゾワゾワとした感覚に襲われた。