校舎から出てくるやつらの視線を感じ、場所を変えて話そうかと立ち上がる。

「今度は私が助けてあげたい」

 しかし、強い意志を示す彼女に真っ直ぐ見つめられ、仕方なく座り直した。

 桐島は明らかに変わった。

 以前よりも素直になったし感情も表に出すようになった。なにより人と関わるのを嫌っていた彼女が、こうして自分から他人のために動こうとしている。

 桜井月が彼女を変えていた。

「月ばっかり傷ついてあの男が平然と過ごしてるなんて許せない」
「分かってる」

 俺もこのままでいいとは思っていない。

 あの現場に居合わせただけに、許せないという気持ちは誰よりもあるつもりだ。

「言い逃れできないような決定的な証拠でもあればいいのに」

 桐島の言葉に、無力な自分がもどかしく感じる。

 携帯でもあればなにか使えそうな証拠があったかもしれないのにと、悔しくなる。