「俺もここの学校気になってて、ちょうど、そうちょうど申し込もうとしてたから会えたりしてって思ってさ」
「そんな偶然あるんだね。それならもっと早く言ってくれれば良かったのに!」
桜井月が編入すると分かり後から慌てて申し込んだのは熊の方だ、と冷ややかな目を向ける。黙っていてくれと言わんばかりに訴えかけてくる表情に、俺は仕方なく口をつぐんだ。
「でも良かった。私何日経っても友達できなくて、ほとんど部屋にいたんだよね」
桜井月はあっけらかんと言う。
「やっぱり」
自然と口から言葉が溢れ出た。
「え?」
不思議そうに振り向いた彼女と目があい、慌てて首を横に振って誤魔化す。
そこまで広い島ではないはずだからここまで探して会わない方が不思議だった。でもこれでやっと腑に落ちた。
熊に睨まれ今度こそレッドカードを突きつけられそうな勢いだ。しばらく黙っていようと口を固く閉じる。
「そういえばまだ紹介してなかったっけ。親友の海、中学の同級生だったんだ」
「海くんはじめまして。さっきはありがとう」
「よろしく」
これが俺と桜井月の出会いだった。