今日も桜井月は休みだ。

 いつもなら四人で固まって座る席も、周りは見知らぬ同級生たちに囲まれる。

 対角線上にいる熊と林太郎の背中を見ながら、無心でカチカチとシャーペンのノック音を鳴らす。

 みんながいないだけで一日がこんなにも退屈だったかと痛感した。

「よっ」

 ひとりで帰ろうとしていたら、校舎前の噴水の淵に桐島が座っていて、ぎこちなく声をかけてきた。

 つられて、よっと手を挙げる。そのまま通り過ぎようとしたが、迷った挙句引き返した。

「なに」
「まだ仲直りしてないんだなあと思って」

 周りをキョロキョロと見られ、俺は鞄を地面に放り投げ少し離れて腰掛ける。

 肩をすぼませて座る彼女はぶらぶらと足を揺らした。

「あの子っていつもお節介なの。こっちが何回鍵かけてもこじ開けて入ってくる感じ」

 唐突に話し出したのが、すぐに桜井月のことだと分かった。

「でもこんな私を友達だって言ってくれた人は初めてだった」

 次第に耳を赤くした。