「最近喧嘩っ早くね? 俺に仲裁させるとかどうなって――」
「ちょっと」
冗談まじりに言う林太郎は、後ろから桐島にバシッと叩かれる。
熊とは目を合わせずお互い顔を背けた。
見かねた林太郎が熊の背中を優しく押し、任せろとこちらに目配せをしてきた。
ふたりは自転車に乗って消えていく。
桐島がなにかフォローしようと口をパクパクさせているが、俺は気持ちを落ちつかせるため彼女を置いて歩き出した。
熊と気まずくなったまま一日が経った。
朝も珍しく早く起きてきたが、マリアの用意した食事も食べず先に家を出ていった。
林太郎には「意地張ってるだけだろ」と言われた。
でも今まで友達と本気で喧嘩した経験がなかった俺は、元に戻る方法が分かっていなかった。