「海くん、もういい」

 彼が恋人に許しをこう、情けない姿なんて見たくもない。

 絶望し、なにもかもどうでもよくなった。

「良くないだろ。まだ……」
「もうどうでもいい」

 心にぽっかりと穴が開いた。

 これ以上惨めな思いはしたくないと、海くんの袖を引っ張ってふらふら歩き出す。

 抜け殻のようになった私の肩には黒いジャケットがかけられて、ふんわりと海くんの匂いに包まれた。

 そのあとどうやって帰ったのかは覚えていない。

 気づけばドレスを着たまま真っ暗な部屋の中にいた。