みんな大ホールに集まっていて、外には人の気配がまるでない。

 暗闇の中に消えていくふたりの影が校舎に向かったような気がして、私は必死に後を追う。

 夜の校舎にびくびくしながら仮面を外して走り回ると、一階の保健室から明かりが漏れていた。

 息をひそめながらできるだけ足音を立てないよう近づく。

 心臓はバクバクだった。

 きっと王冠は別の人の手に渡り、まだ彼自身はあのホールの中にいる。そんな淡い期待を抱き、そこにいるのが誠くんではないことを願った。

 しかし少しだけ開いていた扉の隙間から漏れ出す声の主を、私はこの目で見てしまう。

「やっとふたりになれた」

 仮面をとって素顔を見せたのは、私が大好きな誠くんと加賀美先生だった。

 ふたりは見つめあい、次第にキスを交わす。

 机に寄りかかる加賀美先生の上から、彼が覆いかぶさる。彼女の両脇に手をつき、ぴったりと体を寄せ合っていた。

 見たくもない光景から目を離したいのに足が固まって動けない。

 呆然と立ち尽くし、頭が真っ白になった。

「そうだ、あの子は?」
「ん?」
「あなたのことが好きすぎて追いかけてきちゃったって子」

 意地悪く言う加賀美先生が彼の瞳を見上げながらにやりと笑う。

 心臓がえぐられそうだ。