今日こそは誠くんに堂々と会えると思っていた。

 先生たちのスーツを用意したとき、彼の胸元にだけ白い王冠を刺しておいた。

 それは私しか知らない目印。

 出会ったら、髪を見せて恋人の印なんだとこっそり伝えようと楽しみにしていた。

 しかし、その行為が仇になるだなんて思ってもみなかった。

 何度も人とぶつかりながらずれた仮面を必死に押さえ、白い王冠だけを探した。

 なかなか見つからないと落ち込みながら歩いていたら、海くんに会った。

 仮面越しにでも分かる綺麗な二重の瞳が私を見下ろしていて、出ている部分だけを見ても整った顔立ちをしているのがよく分かった。

 背の高い彼と話しながらぐっと顔を上げていたら、ちょうど見えてしまった。

 誠くんが知らない女の人に親しげに寄り添っているのを――。


「ごめん、海くん」

 泣きそうになっていたのを気づかれたのか、どこかへ連れて行ってくれようとする彼の手を無理やり離した。

 誠くんのことが頭から離れず、すかさず反対方向に走ったが螺旋階段にはもういなかった。

 ちらりとそれらしき後ろ姿が会場を出ていくのを見て、たまらず追いかけた。