「なにしてんだよ」
「え、だれ?」

 俺は足を踏まれて倒れそうになったのを見て抱き留めてしまった。

「ちょろちょろ動いてて危なっかしいわ」
「もしかしてその声、海くん?」

 ダンスナンバーの一曲目が流れ始める。

 仮面をつけているのをいいことにノリノリの女子たちが踊り出す。

 ダンスなんて踊らないだろうと思っていたが、意外にも一部では盛り上がっていた。

 邪魔にならないよう壁際に寄ろうとするものの、彼女が急に固まってどこか一点を見つめ出す。

 なにか気になるものでもあったのかと同じ方向に目をやったら、螺旋階段の途中に白い王冠をつけた人物がいた。

 傍には黒いドレスを着た女がいて、男はさりげなく腰に手を回した。

 おそらく星野と加賀美だ。

 桜井月が目を潤ませ動揺しているのが仮面越しにも分かった。