「海、まじで真剣に探して」
「分かってるって」

 テーブルに並ぶ食事に手を付けながら、なんの目印もなくどう探すというのか諦め半分に返事をする。

 彼女が桐島ほど分かりやすい髪色であれば見つけやすいものだが、黒髪は山ほどいて全く区別がつかない。

「あ」

 でもなぜだろう。

 行き交う人を観察していたら、桜井月を見つけた気がした。

「え、なに、見つけた?」
「いや、似てるなって思っただけ」

 彼女は誰かを探している。

 後ろで緩く一本の三つ編みをして、白い王冠の飾りを髪に刺している。

 先程から挙動不審にキョロキョロしている彼女は、男性の胸元ばかり見ていて、同じ飾りの相手を探しているようだった。

「なあ、海」

 熊の声が急にトーンを変えた。

 恐る恐る横を見ればすでに桜井月を視界にとらえている。

「白い王冠つけてるの、そうだよな」
「見間違いかも……」
「あの歩き方と背格好、絶対月だよ。てか、これも色違いだし」

 ぎゅっと力がこもる手には小さな青の王冠が握られている。

 彼女を誘うために大事に持っていたものだ。

 必死に笑おうとしながらも口元を引きつらせているのを見たら、ひどく動揺しているのが分かった。