暗幕で窓から差し込む光を遮り、中世ヨーロッパをイメージして仕上げた場内には薄暗い明かりが灯る。

 ハロウィン当日、いよいよパーティー本番を迎えた。

 まるでタイムスリップした世界。

 ドレスとタキシードに身を包む生徒たちは、鼻の先から上を覆うシルバーとゴールドの仮面を男女それぞれ装着する。異国の地にでも迷い込んだかのような空間が広がっていた。

「なあ、これ本当に見つかんのかな」

 熊の口からはため息交じりの声が漏れる。
 同じような風貌の男女がわんさかいる中、必死に桜井月の姿を探していた。

 今日が勝負だと告白まで持っていこうとしている熊を、俺はもう止めきれなかった。

 桜井月に恋人がいる。

 想像でしかなかったのに、以前本人から打ち明けられてしまい事実に変わった。

 その確実な情報を持っているのに知らないふりをして良いものかと悩みながら、結局当日を迎えてしまった。

 もういろんな場面に遭遇しすぎて自分がどうすれば良いのか分からない。

 全て考えることを放棄したいくらいだ。