「待って、そんな顔しないでよ!」
慌てる彼女は、実はね、と密かに考えていた計画を話し出す。
これは全生徒に配る予定で、カップルじゃなくても気になっている人や普段話したくても話せなかった人を誘うのに使ったらどうかと考えているようだ。
冗談ぽく、「ダンスにも誘いやすくなるでしょ?」なんて言った。
物は試しだと彼女に言いくるめられ、紙袋を押し付けられる。
明日までに配り終えるよう命じられ、もはや真の実行委員のお達しでは頷くしかなかった。
なにかを思い出し家庭科室へ向かった桜井月と別れ、俺は桐島がいる音楽室の様子を見に行くことにした。
ひとりになり、紙袋の中身を改めて見て憂鬱になる。
これから全員にあの説明をしながら渡さなければならないのかと思うと、想像するだけでゾッとする。
丸投げしてきたツケがここにきて回ってきた。
彼女に文句を言える立場ではないが、厄介な役回りを押し付けられたと気分は袋の中身よりも重かった。