「ほら、恋人同士で目印になるものつけたらいいって話してたでしょ。それ!」
記憶を辿りながらそんな話があったかと考えつつ、ひとまず「ああ」と相槌を打ってみる。
「お互いひとつずつ持つの。女の子は髪飾り、男の子はスーツの胸元に通せば、仮面をしてても自分の相手だって気づけるでしょ?」
こんなのもあると次から次にいろんな種類の飾りを見せられ、呆気に取られていた。
「全部違うじゃん」
「そりゃそうだよ。他の人と被ったら意味ないもん」
心の中で、たしかに、と納得する。
「とりあえず全員分用意したんだけどね?」
紙袋が重い音を立てて床に置かれた。
しゃがみ込む彼女があまりにもさらっと言うもので、危うく聞き流しそうになった。
「全員分?」
俺は耳を疑い、紙袋の中を覗き込む。
やけにパンパンだと思っていたら、全員分、二〇〇個の飾りが入っていればそれは重いだろう。
「へえぇ」
絶対に全員分はいらない。
綺麗にカップル成立となる確率がどれほどのものだと思っているのか。引き気味に彼女の目を見て疑わしく思う。