事件から二週間が経った。
港での騒ぎもあって、数日は不審者が出たという噂で持ちきりだった。
最初は怪我をした桐島を見て興味本位で詮索してくるやつもいたが、すぐそこまで迫ったハロウィンイベントのおかげでいつの間にかみんなの話題はすり替わっていた。
イベント会場となる大ホールはまさに準備の真っ最中だ。
ハロウィン前、最後の休日とあって朝から業者が山ほど来ている。
美女と猛獣に似せようとした館内の天井には、メインの大きなシャンデリアが飾られていて、まさかこんなものをレンタルする日がくるとは思ってもいなかった。
「わあ、凄くいい感じ!」
明るい声がホールに入ってきた。
実際に飾られたシャンデリアを目にして、桜井月が興奮気味に言う。
「お気に召したか」
「もう完璧じゃない? イメージ通りだよ」
彼女からそんな言葉が聞けてホッと安堵する。
シャンデリアは最後まで決まらなかった一番の難所だった。