「なにしてんの?」
驚く桐島の声がした。
振り返れば林太郎がランニング一枚になっていて、テーブルにあったハサミで着ていたTシャツをジョキジョキと切り始める。
「ちょっとなんなの」
「動くな。血を止めるんだよ、このままじゃまずいだろ」
彼女の傍にしゃがみこむと、切ったTシャツを巻き付けて傷口をぎゅっと縛った。
「俺のシャツでも我慢しろよ」
痛みに顔を歪ませる彼女に対しぶっきらぼうに言い残した林太郎は、それ以上なにも言わず窓際に戻った。
腕組みをして壁に寄りかかり、ランニングの袖から引き締まった筋肉を見せた。
「うはあ、檀くんかっくいい」
この状況で冗談めいたことを言える桜井月はさすがとも言える。
必死で真顔を貫いている林太郎と恥ずかしそうにパーカーを羽織り直す桐島は、ふたりしてポッと耳を赤くした。
「なあ、俺らどの辺にいるか分かるか」
林太郎と窓を挟んで向かい合い、壁に頭を預ける。
「まさか。南西の森には入るな、だろ。立ち入り禁止の看板無視して入ってんじゃねえよ」
最後に小さく、ばーか、と付け加えてきて、俺は言い返す言葉もなくふっと笑った。