「うっ……」
俺たちは、男に意識がないことに安心しきっていた。
突然なにかが太陽に反射して光ったかと思えば、桐島が腕を押さえてうずくまる。
「おいこら、殴ったやつ出てこい」
頭をおさえて男がむくりと起き上がっていた。
必死に走り男を巻いてきた俺たちは、たまたま見つけた小屋に逃げ込んだ。
「どうしよう、血が止まらないよ」
「うるさい黙って」
おろおろする桜井月に強く言い放つ桐島は、傷口を押さえながらへたりこんだ。
「追ってきてない」
小窓から外の様子を見る林太郎がこちらを見て小さく頷く。
安心する俺は、桐島が羽織っていたパーカーを脱がせ、そっと傷口をのぞいた。
「ざっくりいってそうだな」
あの近さで思いっきりナイフを振り上げられたんだから無理もない。
二の腕からどくどくあふれ出す血はすぐに止まりそうもなかった。
なにか止血に使えそうなものはないかと見回したけれど、がらんとしている小屋の中には木のテーブルがひとつ置かれているだけだった。
唯一下がっていたカーテンを触ると、いつからあるのか分からないくらい埃をかぶっていた。